人間の塊

鋼鉄の国からやってきた転校生が俺の腕にひんやりとした腕を巻きつけてきて、君の柔らかいこの皮膚を少しばかり改造させてくれないか、と耳に妙に生暖く青白い息を吹きかけてきたので了承したところ俺も鋼鉄になった。



せめてアイアンマンよろしく俺のドリルで君を削らせてくれよ、と願い出たが却下、逆に耳の穴に舌を挿入され、にゅるにゅると気持よくなっている間に俺は既に致命的に戻れないところに居たらしい。先生転校生さんとマフミ君が不潔なことを神聖な教室で行っています、と委員長がおっしゃりやがると先生は、いいんだいいんだよそうやって俺たちは成長していくんだ、と力なく答え、廃墟と化した商店街で売れない靴を作り続ける父を持つ山本は俺たちを見て自慰行為を始める始末、俺は俺は俺はー、と叫びながら逝った山本の分身が掛かり、そして俺は錆びた。


その日俺は彼女と東京タワーにデートと洒落込み、なぁ鋼鉄の国はいったいどんな国なんだこんな国かそれともあんな国かと尋ねると、あんな国よ、と返ってきたので俺は満足した。そうかあんな国なのか、なら夜空に浮かぶ月はさぞ綺麗なことだろうな。


俺は彼女にキスをした。


なぁ俺たちはどう仕様も無いくず鉄をまとって生きているわけだがそれはいつか錆びるんだ、そしていつか沈むんだ、そうだろう、東京湾にドラム缶を沈めるとの同じだよ、原理はな、たまに磁石に吸い寄せられて適当こいて引っ付かれていくとそのままドボーン、いつまでたってもその磁力は残り続けて俺たちは永遠に北に向くという方向性を突きつけられのさ。


ゲレゲレと鳴いてまとわりつく猫を吹き飛ばし俺は海に沈む。



ほらこの猫やるからさ、ちょっとばかし浮かばせてくれよ?