□セクサロイドは眠らない

セックスとタマネギはよく似ている、ということを友人が言っていまして、理由は誤魔化されてしまい教えてもらえなかったのだが、頭の中でそんなことをずっと考えていると、確かに似ている気がしてくるから不思議なものである。昔私が付き合っていた彼女は何故だかセックスの間ずっと泣いていた。一応、もしかしたら痛いのだろうかと思い聞いてみたりはしたのだがどうやらそういう類のことではないらしい。理由は判らないのだが、何故だか涙が止まらないそうだ。


タマネギを切る時、我々はよく涙を流すのだが、それはタマネギの汁が我々の鼻に飛び、それが鼻を刺激し涙が出る、だとかそういうものではなく、私は同情からであると思う。タマネギをスパスパと切っている事に対する同情心で我々はどうしても涙を耐え切れないのである。セックスも似たようなものなのかもしれない、確かに気持ちのよさや相手を想う気持ちが介在していることも確かなのだが、或る程度自らを相手より上に置くことで、下々の者へ同情をかけてあげる、きっと彼女も私に同情をかけ過ぎ、そして涙してしまったのだろう。


そんな時私は『セクサロイドは眠らない』を読む。単なるタマネギという同情を超越した心を揺さぶる愛と夢がそこには存在し、いつでも私をまるで熱帯夜にいるみたいに熱に浮かせることができるのだ。