昼下がり

或る晴れた昼下がり、そして英国、俺が午後のティータイムにかこつけゴールデンバットを燻らせていると、ジョンキーツが俺の目の前に現れやがったのであって、折角だから世の中の現象について少しばかり語ることにした。

まぁまぁ立ち話もなんだからどうぞ座ってください、俺がイームズの椅子を薦めるとジョンキーツは、まるでそれが厳かな儀式であるかのように腰掛ける。しばらく左手に据えたパイプを右手に持ち替えたりとしきりに落ちつかなかったジョンが顔を俺の方に向け喋りだした。なぁ君、これは中々良い椅子だな、座りやすくは決してない、しかしとにかく私を楽な気分にさせる、それは確かさ。パイプの灰を地面に落とす。そして身を乗り出す。ある日私が起きるとそこら中血だらけだった、そしてその血はどうやら私の身体の中から、つまり私の口から出ていたんだよ、その血を見たときに感じたのが丁度死とは真逆に対置する生というものだよ、よく考えても見てくれたまえ、確かに君には明日も明後日もいつの日も永遠とも続く日常が存在している、しかしそれは現実ではない、現実はもっとあのアールヌーヴォー調の淡い電灯を君の口の中に突き刺しては出してを永遠に繰り返してそれをそのまま家の玄関に君ごと飾っているようなものだ、それが現実だよ、違うかい?

試しに俺は自ら電灯を誘導して俺の口の中に七回ほど突き刺し六回ほど抜き、刺さったままの電灯を俺の家の玄関に飾ってみた。仄かに光る電子の渦が、俺の身体を通して玄関を明るくさせる。確かにこれは現実だ。

とどまって考えよ、人生はたった一日

決め台詞を終え立ち上がり去ろうとしたジョンに俺は必殺のドロップキックをお見舞いした。ジョンは、何をするんだ貴様、と言い、三度痙攣し、そして息絶えた。可哀想なジョンが死ぬのはこれで二度目だ。

だがな貴様、確かに人生はたった一日、しかし俺は止まれんよ、止まったら終わりだ、確かに誰かが言ったように止まるくらいスピードを上げることは可能だ、だが結局それは止まるくらいであって止まってはいないのだよ、停滞することはすなわち俺の死、一日生きれば充足、しかし一日生きられなければ不満なのだよ。

或る晴れた昼下がり、俺はチャイムの音とともに学校へ戻った。