火星人

ワルツ10番に合わせてラ・マンと踊りに耽っていると大きな地震が俺たちを襲った。地震と言うより、地鳴り、揺れよりも音が俺たちの鼓膜に突き刺さるように建物の中に響く。ラ・マンの腕を取り揺れと強烈なサウンド、そしてそれをさらに助長する音楽に身を任せ、軽快なリズム、合わせて鳴るヒール音、奴らの叫び声に、俺は歓喜する。

すると、隣の人間の皮が捲れたかと思うと火星人の頭がニョキニョキと出てきたので仕方なしにハンマーで叩き元に戻していると、左奥の方で座ったまま跳躍している奴の目玉が飛び出して俺の方を見だしたので、おいおい目を出したらちゃんとしまわなくちゃ駄目じゃないか、って考えているとラ・マンは既に物体Xに変貌を遂げていて俺を食べようとしている寸前だった。

クソッ!

俺は直前でラ・マンだった物体にソナタアクティカを放ち八つ裂きにし、頭の中で短い間考えた末、恐らくあの地鳴自体が俺たちの希望の星を侵略する火星人どもの合図だったのだ、という結論に辿り着く。野郎ドモはもともと俺たちを殺す計画だったのだ。

周りを見渡すと凄惨な状況になっており、どうやら既に半数近くの人間は火星人に成り下がっていたようで、他半数は今から火星人になるところだった。一匹の火星人が年をめされた老人に言った、火星人になれば君たちは死んでからも救われる、もし火星人になれなければ君たちに待っているのは未来永劫続く苦しみだけだ、火星人を信じ父なる火星人を敬いなさい。

そして老人は立派な火星人になった。

一匹の火星人が有能なサラリーマンに向かって言った、この国で出世するにはWASMが必要だ、ホワイトアングロサクソン系火星人の略なんだがね、ここが重要なのだよわ、判るね、もし君が出世したいなら火星人になるしかないんだよ。

そしてサラリーマンは野心的な火星人になった。

一匹の火星人が十四、五歳と思われる少女を見つけると言った、お前は魔女だ、火星人に帰依しない魔女は本当は裁判にかけ磔にし火であぶり殺さなければならない、しかしお前は特別に許してやろう、だから俺の相手をするんだ。

そして少女は火星人と交尾を始めた。

ここで一匹の火星人が俺の方を見ながらもう一匹の火星人に言った、あいつを見ろ、大量破壊兵器を持っている、俺たちを殺す気だ、殺される前に殺すしかない、三秒以内に降伏しなければ殺す、321、はい終了、殺すね。

そして俺は殺された。