雨に濡れる

最近よく電信柱の上に立って世界を見下ろしている。するとどうだ、知らず知らずのうちに涙がこみ上げてくる。いったいどうしてか、と自問してみるも答えは見つからず、この世界を憂えているのか、このちっぽけな俺自身の存在を嘆いているのか、それともある種の感覚を誰かと共有しているのだろうか。

ちょっと自分の感情を覗き込んでみろよあんた、何を見ている?高くそびえる摩天楼の上から浮いた視点はそこそこへと移り変わり、明けそうで明けないもどかしい空が、腐りきった大気と人間の魂を吸い込んでいく割れたビール瓶が、朝五時だというのに絶えない人通りと電気と誘導灯が、俺の感情が見えないかい?

なぁ、俺の中の居心地はどうだい?快適かい?それとも不快なのかい?



今も俺はこうして立っている。

涙は何故だかまだ止まる様子はない。

空も或いはまだ明るくなりきってはいない。

もしかしたら、これは既に昼と夜の間なのかもしれない。