メイク・メイド―5(四十七件)(23:59)
メイドはご主人様の過去に触れてはいけない。
これはアイアシ・ザックモフが作り出したメイド三原則の一つだ。
しかし、一度だけ、スミレは、私の過去を尋ねた。
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「ご主人様は何故、ワタシをお作りになられたのですか」
私は、ぎくっ、とした。
無邪気な笑顔を私に向けるスミレをぎょっとした目で見ながら、私は固まってしまった。そんな私を前にしてスミレは首をかしげていた。
私はゆっくりと、それでいて威厳を持たせるように言った。
「スミレ、メイドはご主人様の過去にふれてはならない」
「申し訳ありませんでした、ご主人様」とスミレは慌てて言った。
「いや、いいんだ、いいんだよスミレ」と私は静かに応えた。
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私は、昔、メイド工場で働いていた。
メイドをダンボールに詰めて、出荷する仕事だ。
ベルトコンベアからは毎日毎日メイドが流れており、作業も淡々としていた。単なるアルバイトである私の目の前を通り過ぎていくメイドたちは「おかえりなさいませご主人様」とスマイルを私に押し付けていく。私はそれに笑顔で対応し、素早くダンボールに詰めるのだ。
あまり規則に厳しい仕事ではなかったが、一つだけ絶対に守らなくてはいけない規則があった。もしそれを守らなかった場合、アルバイトをクビになるばかりか、賠償金を払わせられる可能性もある。それほど厳しいある種のルールだ。
それは、メイドに、恋をする、ことだ。