メイク・メイド―3(二十一件)(19:40)


例えばほんの数週間前にも偽装事件があった。


大手スーパーが中国産メイドのパッケージに秋葉原産と記したその事件は、消費者に大きな衝撃を与えた。見た目には判りにくい違いで値段が変わるのであれば、初めから外国産を買ったほうがよいのでは、という考えが浸透しつつあった。


「おかえりなさいませご主人様」


私が木からもぎ取ると、メイドはそう言った。


私はメイドを家の中で丁寧に洗った。


髪の毛を洗っているとメイドはくすぐったそうに笑った。


「君の名前を何にしようか考えている」と私は言った。


「ご主人様がつけてくださるのならなんでも嬉しいですわ」とメイドが言った。


「じゃぁ、スミレ、なんてどうだろう」


「はい、花言葉は、小さな幸せ、ですね」


「そう、小さな幸せ」


「小さな幸せいっぱいにするように頑張ります」