マヨルカの夏



今年の夏も何もせずに終わった。


温暖化だかヒートアイランドだか知らないが、毎日毎日照りつける太陽とねちねちとした湿気が俺の身体にまとわりついて東京の糞暑さを助長するのであって、そこで俺と言えば暑さや倦怠感やらと理由をつけては家から出ることも、ましてや部屋からも出ようとはしない始末、アスファルトが溶け出すような時間になってようやくのそのそと寝床から這い出ては腐りかけの飯を喰らい、夕涼みまでの長く無意味な時間を延々読書、或いはテレビジョン、喉に渇きを覚えればコークを胃に入れ、腹が冷えては用を足す、あとは過ぎ去っていく時間をジッと部屋の中で待つだけである。


街に闇が差し始め熱気も幾らか和らいだところで、流石の俺も腹は減るし頭は回らないしで家から出てちょっとした汗でもかいたり外食でもしたりしよう、ってな按配のことを考えたりもするのだが良くてコンビニエンスストア、悪けりゃぁエアコンディショナのお膝元を離れる玄関で待ったが掛かる、これが俺の限界。


とは言っても腹が減っては戦は出来ぬと言いまして、冷蔵庫を開け三日前に徒歩五秒ほどの場所にあるセブンイレブンにて購入したツナマヨおにぎりを貪り喰らい、これもまた大分前からあるような気がしてならない飲むヨーグルトを喉に流し込み、やれやれ今日はこれで大方やるべきことは済んだのであるし後は寝るだけだな、という具合にバルコニで煙草を燻らせたり、おぼろげな月を眺めて感傷に浸ったり、そういえば先ほど喰らいましたツナによって水銀がまた溜まったようですね、と独り言を呟いたりして過ごし、明け方近くに俺の部屋に立派過ぎる鳩時計が五回ほどポッポポッポと泣き喚くのを聞き届けてから寝るのである。


そのサイクル。


この腐ったルーチンは誇張でもなんでもなく、俺の生活全般から推察するに妥当な線であると思われると同時に主観的に都合良く捉えたとしても破綻しているのが理解できるのであり、この俺でさえも幾ばくかの危機感が常に心中に存在しているのであるが、だいたいに於いてそれも毛穴まで焦がすような熱気に阻害され、どこか遠くへ投げ捨てられる、それは海の表面を浮き輪に掴まりながらゆらゆらと漂い、いつの間にか沖に流されてしまう感覚に似ている、或る種の危険性を内包した安定感だ。


そんな退廃的で或る種麗しい生活を滞りなく続けてきた俺なのだが、この残暑の季節、夏も入道雲と共に終わりを告げようとしているこの季節、残された時間は少ないとばかりにちょっとした自己変革を行おうと思い立ち、旅行でもしようかと一週間ほど前から雑誌をくだんのコンビニエンスストアで買い込み計画しているわけでありショートトリップ、こんな腐った俺に合うような旅行先はないだろうかとページを繰るも中々見つからず、そしていつの間にか一週間が経過し、ようやく一昨日になって俺はある場所に目をつけた、マヨルカ島である。


おいおい貴様マヨルカ島といえばショートトリップの枠組みから外れているのは明確である上何よりリゾートの代名詞的存在であり貴様の退廃性を助長するだけではなかろうか、ふむ、なるほど、確かにそれは言い得て妙である、だがこの俺が求めているのはハリウッド的なアドベンチャでもカンヌ的な哲学性でもなく、単なる安定感、つまるところそれに尽きるのである。


マヨルカのビーチに映えるトップレスの美少女どもの豊満な肢体もさることながら、輝き我々に照りつける太陽、透明度の高い海、島一面に茂るアーモンドの森、どれも俺に対して安定感――言い換えれば浮遊感――を与えてくれる重要なファクタになる事は確かであるように思えるのだ。



で、いったい今現在この俺という存在がどこに位置されているかというと、欧州上空高度一万五千フィートを優雅にエグゼクティブクラスで滑空しているのであって、密かに持ち込んだフレッシュライムをジンに絞り、早過ぎるギムレットで自らの行動力に乾杯しているのであった。



日がな一日亀の如く毛布に包まったり闇の中でジッとしている俺にとって、十四時間程の空の旅は全く以って苦痛ではなく、むしろ快楽の境地に達しており、既に十時間が経過した今ですら俺は程よい快感に浸っている、それもこれも俺の怠惰な生活の為せる技であったが、言うまでもなくそれに対して感謝の気持ちなど微塵もない、たとえ何かしらの感謝の言葉を捧げなくてはならないとしたら、それは全日空の素晴らしいサービスと、Dr.マリオをその一環として盛り込んだ勇気ある責任者へ捧げたい。


ところでDr.マリオの楽しさとフライトアテンダントの美麗さは勿論素晴らしいのであるが、隣の席に腰掛けている少女が空の旅の疲れを一層癒してくれている事を忘れてはならない、少女はこの世の者とは思えないほど美しい姿勢で読書を真剣に楽しんでいるのであり、どうにもその姿が俺を魅了して止まず、俺は彼女が少し体勢をずらしたり、窓側である俺の方を見たり(実際は俺を越えて空に浮かぶ雲を見ているのだが)する度に官能的な欲望に駆られる、彼女の読んでいる本を覗き込むと、タイトルには『マヨルカの冬』と書かれている、俺は勢い余って彼女に話しかけた、こんにちわ


「…えーと、こんにちわ」じゃれていた蜥蜴の尻尾がぷつんと突然切れた時の猫みたいな顔で俺に向かってセイハロー、そんな姿も少女の魅力を増すのに役立つ「君もマヨルカに行くのかな」「えぇ、この飛行機はマヨルカに行く予定です」「うん、確かにそうだね、この飛行機はマヨルカに向かってる」「あなたはマヨルカに行かないんですか?」「もしかしたらね、予定は未定っていう言葉があるし」「そっか、じゃぁ私もマヨルカに行くかもしれない、ってことかな」「そう、そういうこと。ところで君はショパンジョルジュ・サンドの愛の軌跡を辿ろうと思っているようだね」不意の質問を与えると、ちょっと少女の顔に驚きの表情が浮かぶ「え、何故判ったんですか」「僕は何でも知ってるんだよ」少し呼吸を置く「ほら君の唇が乾いてる」「うん」「僕の唇は潤ってる」「だから?」「それだけだよ」「何それ」


けらけらと少女は笑い声を奏でる、そして読書に戻る。


読書に戻った少女はやはり俺を魅了して止まず何より凛としていた、俺がそういった感慨を――或いは劣情を――この少女に対して催している一因には、恐らく夏の長期休暇という一定期間女性と対峙してこなかったというのもあるのだろうが、それを差し引いても少女は可憐であると言わざるを得なかった、特にか細い手から伸びる指先が小さな動きを見せる度に、まるでピアノの鍵盤を優雅にいるかのような錯覚を受けてしまう。


そんな少女のアイリスの奥深くを眺めていると、少女が俺の方へ向き直り、どうかしました、と疑問符を投げかけたので俺は慌てて、そして恐らく赤面し、更に言ってしまえばどもりながら、あ、うん、えーと、なんというか、そんな俺の言葉を遮って、大きな揺れが飛行機を襲う、



ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ



飲み物を配るフライトアテンダントや、用を足しに行こうと立ち上がった人々の足を掬い上げる、簡易デスクからギムレットが零れ落ち柔らかいカーペットを濡らす、朱色がクリムソンレーキに染まる、出し抜けに起こった揺れの為に周囲の乗客たちが口々に騒ぎ出す。


「皆様、当機は乱気流の中に入りました、シートベルトを着用し、ベルト着用サインが消えるまで席をお立ちにならないようご協力お願い致します。なお、これより客室乗務員も着席致します」


地上から遥か空の上での大きな振動ということで多少驚いたがフライトに支障が出るほどではなさそうだ、『乱気流』という理由を付加された為か、周囲の喧騒にも落ち着きが出来、やがてまた楽しそうな談笑に変化していった、突然起こることの殆どは大抵簡単に収束するのである。


あのぅ、少女が虹彩を放つ瞳を俺に向け、あくまでも淑やかさを貫き俺に問いかける、手がえーとあのぅ、俯きしどろもどろと話す少女を訝しみながら自らの手がある方向に目を向けると、そこには見慣れた真っ白な今にも壊れてしまいそうな手があり、すなわち俺は少女の手を力強く握り締めていた、そして少女は小さな恥じらいのある声で言った、


痛いです。


「ご、ごめん」「いぇ、いいんです」「…」「…」「…」「…、離してくれないの」「あ、ごめんっ」慌てて手を離す「面白い人ですね」けらけら笑う少女「ねぇ、突然で悪いんだけど、君、名前は」「あら、何でも知っているんじゃなかったかしら」「何でも知ってるさ、でもたまには知らないことがあった方がミステリアスだろ」「じゃぁ、百合です」「じゃぁ、って」「もしかしたら、予定は未定だし、でも一応現在は百合」「現在はユリか、良い表現だね。しかも良い名前でもある、百合の花言葉を知ってるかい」「いいえ」「僕も知らないんだ」「何それ」少女はまた笑う、百合の花言葉、それは純潔だ、百合は百合であるが故に純潔性を保持しているのであり、それは紛れもない事実のように思える。


「ユリの夢は何」「随分普通の質問を、あまり普通でないタイミングでするのね」「この飛行機に乗っている間にいくつか夢を見たからね、意味合いは変わってくるけど夢は夢だ」「夢ね、夢は小説家かな、多分」「そう、それはそれは」「何その微妙な反応は。じゃぁあなたの夢は」「僕の夢は抜け出すこと」「この飛行機から?」「色々な意味で、言ってみればマヨルカに着くことが一つの夢だ」「へぇ、随分実現が簡単そうな夢ね。逆に私の場合は、この道から抜け出さないことになるのかな、あ、窓から外を見て、あれってヨーロッパのどこかの島かな、もしかしてマヨルカかな」海に浮かぶ小さな島が窓からのぞいている。


「ところで、僕たちは出会って間もないんだけど、もしかしたらマヨルカを一緒に旅するべきなんじゃないかな」「それはどうしてかな」あくまで穏やか、ゆっくりとした口調で「だってユリは小説家なんだから物語を紡げるだろ、僕の得意なことはもっぱらピアノだ」「ショパンが弾けるの?」「うん、雨だれとか」「じゃぁ私がジョルジュサンド役ね」「勿論」


ということで俺たちはひと夏のアバンチュールよろしく二人でマヨルカを楽しく闊歩、焼けるような熱を帯びたビーチを貸しきって、透明な海の中をお魚さんとスイミング、群生するオレンジの木から果実を一つばかりもぎとって、それでかじったりなんかして、口いっぱいにサワーを含んで彼女にキッス、言うまでもなく背景には燃えるような西日、俺たちのシルエットがビーチに浮かびあがる。


それで週末にはパルデモサの古びた石畳をべスパで駆け巡り、煤けた白っぽい修道院の壁に寄りかかって煙草をふかして、俺はショパンが弾いたピアノで『雨だれ』を弾き、彼女は机で『マヨルカの夏』を執筆、ねぇジョルジュ愛してるよ、私も愛してるわフレドリック、なんて含み笑いで抱き合ったり、そのままベッドに入り込んだり、まぁそんな甘い生活に酔いしれているのである。




全部、、そう全ては夢想に過ぎない。


さてそろそろ真実を語ろうか、夢、幻、頭の中だけで構成された俺の染みっ垂れたファッキンアスホールな話にはうんざりだろ貴様、何しろ俺もうんざりだ、確かに世の中には都合よく物事が回る時が存在する、しかし一月も腐ったような生活を繰り返し、自らを騙し、そしてある日突然自己変革を試みたところで何かが起きると貴様はお思いか、否、あり得ない、日常はいつまで経っても日常の地平線を越えられないのであり、そこを飛行機で飛び越えようと考えたって無駄なのだ、貴様は絶望するよ、飛行機の窓から見える景色が先ほどまで自分が居た場所であることを知ったらな、貴様は回りまわって同地点へと回帰してしまうのだ、土から生まれた人間がまた土へと戻っていくように。


つまり、現在の震度はマグニチュード7.3ですよ皆さんちょっと気を付けないとゲレゲレと鳴く蛙たちのケツにストロー刺して膨らんでパンッな無残な最後を迎えますからね、ってな具合で飛行機が突然揺れだしたのと時を同じくして左翼から煙が上がり、暫くして――と言っても数十秒程のことなのだが――ゴキブリが叩き潰された時上げる悲鳴のような音を立てて後ろへ流れていった。


「な…、なんだこれは、堕ちるのか!」


一人の男の激昂と共に客室は騒然となり、収拾がつかないほどざわめきがその場を支配しだす、口々に叫びの声を上げ、誰にともつかず――恐らく神に――助けを求める。「皆さん、こんな時は歌いましょう、かの坂本九氏も機体が完全に墜落する直前まで皆を励まし歌ったというではありませんか、だから我々もtぐぁっ」スリッパらしき物がその男に投げつけられた「不吉な事言ってんじゃねぇっ!それは死ぬってことじゃねぇか!俺は、俺はまだ死なねぇぞ…、まだ三歳になったばかりの子供がうぐっ、俺にはいるんだよっ!」嗚咽を漏らし叫ぶ男、しかし言葉の半分ほどは轟音に掻き消されている「落ち着いてくださいお客様、当機は万全の体制で安全対策を整えております、その為にも是非お座りになっておまち」「うるせえ!」「あぁっ」吹き飛ばされるフライトアテンダント「結局は綺麗ごとじゃねぇじゃ、堕ちるなら堕ちるって言えばいいんだよ」「そうだそうだ!私だって…私だって残してきた妻が…、それを貴様らなんぞに!」ニ、三人の男たちが揃いも揃って一人のフライトアテンダントの女性を取り囲む「この外道どもが、俺の人生を返せ、残された人間の金指さを知れ!」「それを言うなら私だって」「俺も!」「僕も!」「妻が!」「子供が!」「妹が!」「兄が!」「従兄弟が!」「友達が!」「この悪魔どもめっ!」


「うろたえるなっ!」


一人のバンダナをつけた男が金切り声をあげて立ち上がる「でかい態度とって今まで威張り散らしてた大人が何醜態晒してんだよ、見ろ、子供たちが震えてるじゃねぇか、だいたい飛行機の故障とその女性は関係ないだろう、自分たちの不運な出来事を誰かのせいにしたって意味がないんだよ、俺は、俺はミュージシャンだ、未来にMTVやら何やらとテレビにバンバン映る予定だったミュージシャンだ、だから俺は歌うぜっ、皆の為に、そして俺の未来の為に、それしか出来ないからな、ワン、トゥー、アワン、トゥー、スリー、上をむぅーいてぇ、あーるこぉぉぉ、涙がぁ…」


大分斜めに傾いた機体の中、一人の若者が取り出したギターがダイアモンド色の空に輝く、ギターにかぶった埃がチラチラ舞って更に輝く、それまで機内を支配していた喧騒が静まり、多くの人間が耳を傾けていた。


関係ないけど、ショパンジョルジュ・サンドマヨルカに療養と銘打った駆け落ちを果たしたのは十九世紀半ばの冬であった、それ以前からパリ社交界では彼らの不倫関係が好奇の目に晒されており、駆け落ちはそれら世間のしがらみや現実的なショパンの病気からの逃避行であったと言える、だがそれは単なる逃避とは為り得ず、そこでサンドは自然の厳しさと美しさそして文明と人間の意義について書いた『マヨルカの冬』を完成させ、ショパンはかの名曲『雨だれ』を完成させた、逃避した先で逆に自らの現実を突きつけられたのである。


すなわちショパンは俺だ。


療養をも兼ねたこの旅を一種の自己変革であると自らに言い聞かせ、旅先で誰か、本当に誰でもいい人間をジョルジュサンドに仕立て上げる、そのことによって東京の雑踏から逃げ出したと思い込み、或いは逃げ出すのに成功したと誤認するのだ、しかし真実のところこの自らの人生を賭けたエスケイプは失敗し、輝かしい未来のへったくれもなく、待つのは死ばかり、だがどちらにせよ、たとえ俺が輝かしい人生を送っていたところで最後は同じなのだ、少しばかり設定がドラマティックになっただけ、何も変わりはない。



俺は鞄から煙草を取り出し火をつけた、ゴールデンバッド、フィルタを通さないニコチンとタールが直接俺の肺の中に送り込まれ束の間の充足感を与える、しかし、俺の周りに居る人間どもの顔はどうにも負の感情は浮かんでおらず、それどころか自らの快楽に浸っているように見えた、大声を張り上げ歌う人たち、一体感から与えられる心地好い空間は或る種の異様な雰囲気に包まれていた。


俺は彼女の左手を掴み、強く握り締め、そして語りかける。


マヨルカに着いたら車をレンタルしてアーモンドの森に行こうか」彼女はきょとんとした顔で答える「なんか変よ、急にそんなの、怖くないの?」「怖くないといったら嘘かもしれない、でも僕には煙草がある」「煙草で満足できるなんて、随分安いのね」「一体感で満足するよりは多少価値があるかもしれない、あの若者が吐く言葉は単なる宗教さ」「確かにそうかもしれないわね」手を口元に持っていて含み笑い「でもどちらにせよ変よ、だってまだ会って間もないんですもの、デートには早すぎるわ」「全く変じゃないよ、恋人同士なんだから」「いつ恋人同士になったの?」「さっき決めたよ」(短い夢の中でね)「そうなの?」「だって僕たちはもう十時間以上も一緒にいるんだよ、恋人同士でなくてなんだろうか」「そうかな」「そうだよ」


「お客様、当機は緊急着陸をスペイン北部マドリッド付近山中にて行います。それに伴いまして、シートベルトをしっかりと締め、着陸時の迅速な行動をお願いいたします、繰り返します、投機は緊急着陸を…」


誰もが判っていた、機長の言葉には真実味がまるでなかったことに、そして嗚咽がその端々に紛れていたことに、単なる事務処理的な言葉でしかなく、それが意味することが着陸ではなく、墜落であることに、しかし誰も言葉に表さない、ただ歌うだけだ。


「なーみだがぁ、こぼれぇ、ないよぉぉに」




ねぇ、マヨルカの冬は雪が降るんだって、アーモンドの白い花がそこら中咲き乱れてね、辺り一面真っ白になってそれが雪が降ってるみたいに見えるんだって、私も見れるかな、マヨルカの雪。少女が微笑みの中語りかける。多分ね、予定は未定だからね、もしかしたら見れるかもしれないし、見れないかもしれない、でも冬まではまた少しばかり遠すぎるね。俺は答える。


ショパンとサンドが過ごした暖かな冬は、真っ白で、美しく、それでいて愛しさの熱を助長するものだったけれども、俺が飛行機の窓から垣間見たマヨルカは、真っ青な海岸線と緑葉茂る丘が果てしなく続いていて、どこか儚げで、俺は引力に引っ張られながらついつい『地上の楽園』について夢想してしまう。


我々はこれから『そこ』に向かおうと思っているのです。